「ボケる人間になれ!」ダイノジ大谷伸彦先生が教えるこれからの時代の生存戦略~MOA大学 少人数の教室 vol.3~
業界のトップランナーに授業をしてもらうMOA大学の教室。
4月23日に開催した第三回目では、講師にダイノジ・大谷伸彦さんをお招きし「これからの時代の生存戦略」をテーマに講義していただきました。
アメリカと日本の文化の違い
大谷伸彦さん: どうもダイノジのダイノジじゃない方です(笑)。
今は芸人をやりながらDJをやっています。
12年前にDJを始めたんですが、始めた当初は全くウケませんでした。
ウケることが価値の基準となっている「芸人」の自分にとってこれほど悔しいものはありません。
なので、都内のロックフェスにいくつも行ってみて研究したんですよ。
そしたら、いくつかの共通点を見つけたんです。
まず一つは、日本人とアメリカ人の文化の違いです。
例えば野球の応援に関して。
アメリカ人は、自分から立ち上がってスタンディングオベーションやウェーブなどの能動的な動きをします。
反対に日本人の場合はどうでしょう。
応援歌を作成し、それを覚えてみんなで一緒に歌いますよね。
「今はこの回の攻撃でこの選手だからこの歌を歌うよ!」といった具合にです。
この二つの違いを簡単に言うと、
アメリカは「自分の中から生まれたものをその場でやること」が、
日本は、「覚えてきたものをそれをみんなでやること」がいいと感じるということです。
話を戻しますと、僕のやっているDJってその場で踊らせたいわけです。
しかしここでも、日本とアメリカで差が出ます。
DJというヒップホップの文化はアメリカから来ました。
アメリカ人、ヨーロッパ人は足踏みして感動を伝えたり、ステップを踏んだりします。
一方、日本人は上での動きになるんです。
アイドルでよく見るヲタ芸を思い浮かべてください。
体の上側で踊ってるでしょ。ゴールデンボンバーの踊りもまさにそうですよね。
これは皆で合わせてやることができるから人気なんです。
これって何故だろうと考えると、日本には盆踊りの文化があるからですね。
まさに上側で踊ってますね。
この盆踊り、実はかなり簡単なものです。
誰でも踊れるようにしていて、祭りの参加者を巻き込んでいく。
下手でも踊れるんだ、自分でも踊っていいんだという許可を感じやすいわけです。
このポイントを見つけた時に「DJダイノジにしかできないやり方ができるな」って思ったんですよね。
「僕、芸人なんで」っていう言い訳ができるんです。
圧倒的に自分へのハードルが下がる。
そしてハードルが下がるからこそ、目の前でそんなに踊りのうまくないダンサーを踊らせてしまえば、自分も踊っていいんだという空気感が作れるんです。
これをやってみたら、本当にみんなが踊ってくれて高揚しました!
エンターテイメントとは「嘘の共有」である
こういった経緯からDJダイノジが誕生したわけですが、芸人、DJの両側から叩かれました。
「芸人のくせに何やってんだ」といった感じで、人と違うことをやっている人をみんなで袋叩きにするやつです。
しかし、芸人とDJはそんなに変わらないんです。
ある番組の企画で、いつも笑いが取れている芸人のボケにお客さんが絶対に笑わないというドッキリを仕掛けました。
そしたらその指示通りにオーディエンスは全然笑わず、その芸人さんはあたふたして、ドッキリが成功しました。
しかし、僕はここにすごく違和感があったんです。
その時まで、人は面白いから笑うのかと思ってました。
しかし、違いました。面白かったとしても、笑わないことができるんです。
「面白そう」という前提があるから人は笑うことがわかったんです。
かつて、相方の大地はエアギターで世界一になりました。
エアギターって、本人もお客さんも「そこにギターがないという」前提を許容しているんですよ。
それがなければ何も面白くない。
ここにエンターテイメントの本質があるわけですね。
「ギターがない」という嘘をプレイヤーもオーディエンスも共有するわけです。
「面白そうだ」という認識のもとに面白さを感じる。
「おもしろいことを上から振りかざす」のではなく、お客さんと互いに、おもしろいことを共有していくということですね。
ボケなさい
最もアメリカ人が訪れる日本の温泉がどこかご存知でしょうか?
箱根でも草津でもなくて、日本人が全く知らない長野県の地獄谷温泉なんです。
jigokudani-yaenkoen.co.jp
それは何故だと思いますか?
実は、この温泉は「猿と一緒に入れる温泉」なんです。
これがアメリカ人にとって、かなりのボケでそれが紹介されたことでコンテンツがバズったわけです。
スペインのトマト祭りを知っている人は多いですよね。
実はあれ、ヨーロッパではかなりマイナーなお祭りなんです。
それでも、日本人は知っています。
日本人にとって、トマト祭りは「ボケて」いるコンテンツであり、それを取り上げる媒体があるから僕達は知っているわけです。
何かコンテンツが流行るためには、そこに「ボケ」の要素が必要です。
人は、面白そうだからそこに行く
僕ら日本人は「東北を盛り上げるために旅行に行こう」と思いますが、海外の方たちは「震災にあって、かわいそうだから旅行に行こう」という気持ちにはならないのです。
中国人観光客は、大阪にたくさん訪れています。
それは、USJというコンテンツがあるからですね。
当たり前ですが、人は「面白そうだから、楽しそうだから」という思いを元に行動するわけです。
大分県別府市は観光客の数が激減してしまい、市の状況を保つのに必死でした。
そこで、清川真也さんは「シンフロ」というリズム芸を流行らせようと仕掛けました。
onsenkenoita.com
別府市長は「湯~園地」という市の命運を担った超大ボケをかましました。
camp-fire.jp
この結果が大ヒット。
ボケるからスキができる。
ボケなければ、何もはやらずにお金が集まらない。
そんな時代です。
ボケることに覚悟を持ちましょう。
昨年ブレイクした、サンシャイン池澤くんやPPAPも同じです。
汎用性のあるボケによって、たくさんの人にパロディーにされました。
自らのスキやボケを見せ、相手に突っ込ませる機会を提供する。
これこそが大事です。
ツッコミ役の人は世間にごまんといます。
今求められているのは、笑われる人なんです。
別府はアジア立命館太平洋大学があり、3000人近くの外国人がいる超ダイバーシティな街です。
これは、温泉街という特色が成り立たせています。
超ダイバーシティな環境で先ほどの大ボケをかましました。
だから、4000万円近いクラウドファンディングを別府市は成功させることができた。
これはモデルケースになると思います。
逆の話をすると「東北は原発があることによって予算が下りるから、何か面白いことをやろう」という考え方でした。
別府は「こんな面白いことをやりたいから出資してくれませんか」という考え方でした。
2つの街の結果の違いはこの考え方によるものです。
「何でボケようか?」という時代になっています。
『悲劇は絶対喜劇になる。』チャップリンの言葉です。
欠点を描きましょう。
欠点は短所ではないです。長所なんです。
挑戦しよう
皆さん、なぜ挑戰しないんですか?
挑戦しましょうよ!
挑戦できないのは、自信がないからかプライドが高いからですね。
ロボットが活躍するこれからの時代に、正確さで勝負してどうするんです?
だったら僕ら人間は泥臭く、挑戦していきましょうよ。
大事なのは修正力です。
「挑戦して失敗したときにどう生きるか」それを考えることが大事です。
大谷伸彦さん、ありがとうございました!