Readyfor代表取締役・樋浦直樹さんが教える「信用をお金に換えられる時代に意識すること」
9月17日に開催した第10回目の授業では、特別講義Vol.2でもご登壇いただきました、Readyfor代表取締役COOの樋浦直樹さんを講師にお招きし講義をしていただきました。
樋浦直樹さん
東京大学教育学部卒業。大学では運動会ラクロス部に在籍し、副将を務めた4年次は大学リーグ得点王を獲得。
2011年よりボストン・コンサルティング・グループにて小売・消費財業界を中心とした大企業のコンサルティング業務に従事。ターンアラウンド、営業改革、新規事業計画構築、商品戦略構築など、多岐にわたるプロジェクトを経験。
「誰もがやりたいことを実現できる世の中に」というREADYFORの思想に賛同し、2015年1月READYFOR株式会社COOに就任。2017年7月同社代表取締役COOに就任。
「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」
樋浦さん:大学時代、ラクロス部の副将として部活に打ち込み、人生で初めてやりたいことに気付きました。
それは「一途に何かやっている人をサポートする」ということでした。
部活も引退して就職の時期が近づいて来たこともあり、とにかく誰かをサポートできる仕事がしたいと考えた結果、経営コンサルタントの会社に就職を決めます。
経営コンサルタントの会社で働く中で、経営者と話す機会もたくさんあり、かなり良い経験をさせてもらいました。
一方で、自分が最もサポートしたいと考えていた「よーし、俺はこれをやるんだ!」という情熱を持った個人と接することができる機会は少なかったと思います。
逆にチームを守ったり、立場を守らなければならないような人の方が多かったですね。
そんな経緯もあり、「ずっとこの会社にいるわけではないんだろうな」と考え始めていました。
長期的に見ると、個人でエネルギーのある方たちを支える仕事がしたいと思ってたんですね。
それを周りにもよく話していたら、Readyforという会社に出会ったんです。
行動が情熱を生み、情熱が行動を生む
僕が今こうしていることをまとめると、
- 大きな方針を決めて動き続けていた
- それを周りによく言っていた
この二つが大きいかなと思います。
よく相談されることとして
「何かやりたいんだけど、やりたいことが明確に決まっているわけではなくて、どこから動き始めて良いかわからない。けどこのまま就職するのとは違うと思っている」
ということがあります。
そういう人は、とりあえず自分の方向性を決めて動いてみると良いと思うんです。
最初からこれしかないと決め込めている人はなかなかいません。
自分のやりたいことに対して「そこまで思い込めないなぁ」と思うなら、何かしら方向性を決め一歩進んでみて、一生懸命学んでみると良いです。
そこに情熱が生まれてくるということもあります。
そうして生まれた情熱を元に、次のステップが決まってくるということもあるんです。
皆さんもこういう指針を元に動いていければ、いろいろな面白いことに繋がっていくんじゃないかなぁと思います。
モノ消費からコト消費へ
最近、消費者の視点がモノからコトへ、と変わってきています。
モノ消費=機能的価値を消費すること
コト消費=体験を消費するコト
お金の使い方に変化が起き、自分らしさということにお金を使うようになってきたんです。
そういう時代において、事業者が今の消費者に対し、どうすれば自由に好きなことをやっていけるかという指標が、貯信できているかということ。
CDでよく例えられますね。
昔は数百万枚の消費があったCDが、今はそれほど買われなくなりました。
最近だと会いに行けるアイドルということで握手会という体験や、ミュージックフェスやライブにお金を使うという方にお金が流れています。
お金の使い方の変化が起きてるんですね。
昔に比べ、生きていくこと、食べることや住むことは、ほとんど困らなくなりました。
言い換えると、選択肢がない世界から、自分らしさを出すための意思決定にお金を使う世界になって行ったんです。
だから、なぜ自分はここにお金を使うのか、という理由がわからないサービスは選ばれなくなっている。
僕は消費者の中で、「探す知る・選ぶ判断する・伝える広げる」という3ステップが起きていると考えます。
コンテンツの多くは今、ほとんどが誰かの体験で広まっていますね。
昔はCMだったり、企業からの文句だったのが、口コミに変わって来ているんです。
ではこのトレンドに逆らわずにどうして行けば良いかというと、伝え広めたくなる体験を作って行けば良い。
それってなんだろうというと、聞いてほしい、伝えたくなるストーリーがあることだと思います。
じゃあ面白いストーリーとは何か。
それは、「共感性+意外性」があること。
共感性: それいいよね、来てるよね、とみんなが思えること。
意外性: え、そうなの? そんなのありなの? と少し驚けるようなこと。
共感性のみだと、今更感があるって当たり前すぎて人に言えないし、
意外性のみだとただの変な人だと思われることもあります。
この両方を満たしている良い具体例を出すと、認知症の方がやられている「注文を間違える料理店」というプロジェクトがあります。
認知症の方は忘れてしまうことも多かったりするわけですが、もう美味しければいいじゃんとか、みんな幸せなら良いじゃんということで、注文を間違えることを前提とした料理店を出そうとプロジェクトが始まったんです。
これがまさに共感性と意外性がマッチしたプロジェクトで、数十日間の間にたくさんの拡散をしてもらいました。
それはもう、うちの会社のメディア対応が追いつかないくらいに(笑)
一方で面白ければ良いという発想から、外国ではAR搭載のフルフェイスヘルメットというクラウドファンディングがありました。
けど蓋を開けて見たら何も開発が進んでおらず、いきなり倒産したという事も起こっています。
クラウドファンディングをやっていく上でこういうことには気をつけなければ行けないなぁと僕も思っているんですが、これを防いでいくのが、もう一つのトレンドとなっている貯信だと考えています。
貯金から貯信へ
「貯金というよりは信用がモノを言う時代になってきた」ということで、SNSや口コミが重要になってきました。
昔は強かった企業のCMなどは、あまり強みにならなくなってきてます。
もっと言うと、個人と大企業が事業をやる上で、そんなに差がなくなってきているのが現状です。
作れるものや動かせる人、スキルの面でも、優秀な人が繋がって集まることによって、大企業よりも機動力高く、より能力の高い商品やサービスが作れるようになってきています。
その上でハードルになってくるものもありますが。
これはやっちゃ行けないだろうとか、叩かれてしまうかもしれないような既存の価値観ですね。
これを越えるために、みんなから応援してもらえるような、そういう強みがあれば、いろんなことができます。
その強みで一番重要なものが、信用量だと僕は思っています。
ではなぜ今この信用が大事になってきたか。
これまでは、努力をし続けてきた人なのか、昨日と今日で違うことを言っている人なのかが分からなかったんです。
だから貯金をしてきましたとか、お金を出すんで手伝ってくださいというのが、協力する上での一つの指標でした。
けど今は、その発言をするまでの行動が全て残っています。
初めて会う人がいても、会う前にその人のFacebookやTwitterやInstagramを見てしまえば、どういう人かわかるようになってしまったんです。
と言うことで、ちゃんとそういう行動を貯めていった人が、ちゃんと信用も貯められる時代になりました。
そういう時代になったからこそ、クラウドファンディングという、信用でお金を集めるツールだったり、VALUという信用をお金に変えるサービスが出てきた。
そしてそれを使いこなす人たちが出てきていると思います。
そもそも、信用とは何でしょうか。
それは自分が何かをしようと思った時に、応援してもらえるかどうかだと思います。
切り方はいろいろあると思いますが、結局は何かしらの実績からくることだと思うんですよ。
既にやっていることはすごく重要で、信用に足ること。
10回続けてきたことに対して11回目やろうと思う人に対して、11回目が変なことになるとはそうそう思わない。
さらにそういう実績じゃなかったとしてじゃなかったとしても、ずっと言い続けていたり、同じことを言い続けている人というのは、思いつきじゃないかどうかという点において、重要かなぁと思います。
加えて、実績以上に誠実さというのがキーワードになってくると思ってます。
本当に実績を出したとしても、うさんくさいとか、人として好きになれないとか、騙されそうという感覚を持っていたら、絶対信用してもらえません。
だから突飛なことをやろうというよりは、ずっと言い続けてやり続けて、関わったっ人にちゃんと誠実に対応し続けるということが重要になってきます。
自分がチャンスの時だけコロッと豹変して何かをやったとしても、それのログも残るので、なんだかなぁとみんなに思われてしまって、逆に協力して守らないなんてこともある。
シビアな時代になってきてるのかなぁとも思いますね。
信用や信頼にレバレッジをかけること
じゃあもう1つ、もっとスピードを持って行動するためにはどうするか。
実は今は、信用や信頼にレバレッジをかけることができるようになっています。
基本的には現状「10年間やってきたので次も頑張ります」だとみんな信用してくれます。
けど、10年間やらないとなかなか協力してもらえないんだとすると、時間かかるなぁとも思える。
そうではなくて、レバレッジをかけられるようになってきたというのが、まさにクラウドファンディングだとか、VALUみたいな考え方です。
例えばですが、毎年音楽のライブを無料で行ってきたあるグループがいます。
しかし今年になっていつも使っていた場所が使えなくなってしまい、数千万単位のお金が必要になってしまった。
だが無料で開催したいと考えている。そこで彼らは、クラウドファンディングを実施しました。
そうするともう10年間通っている人や、ひたすら彼らが頑張ってやってきたのを見ている人たちからすると、応援しないわけがない。
ということで、1200人の人から2000万円が集まってイベントができた、なんてことがあります。
これはもう過去の実績から見て、間違いなくこの人たちがお金集めて変なことするわけがないし、是非やってほしいという実績を、お金だったり協力だったりに変えた事例かなぁと思ってます。
とまぁそういう事例のクラウドファンディングがいっぱいあって、まず、信用を貯めていればお金に換えることができることが分かりますね。
一方で、レバレッジをかけるというのがどういうことか。
例えばその例で言うと、ゲストハウスを建てるプロジェクトが最近多いです。
ただそんな中、ゲストハウスに関わったことがないという人もいます。
街のためにゲストハウスを建てたいという思いからプロジェクトを発足させた人でも、大抵ゲストハウス業界の中で、ある程度知名度があったりするものです。
けれどこの場合はそれが全くありません。
そうすると当然、最初は全然集まらない。
ほんとにこの人やるのかという気持ちもあって、60日間くらいの期間がありましたが全然集まりませんでした。
けどそれでもとにかくやりたかったので、Readyforのスタッフと協力しながら、とにかく想いを発信し続け、いろんな人に直接お願いに行ったりしたんです。
そうすると実績はないんだけど、情熱は伝わってきて、その人に対する人としての信頼とか、そう言ったものが伝わる。
その情熱を通して「そこまで言うんだったら出すよ!」という人が最終的に200人集まりました。
これは実績をお金に換えたと言うより、お願いをして、いろんな人から信用を前借りしてお金を集めた事例です。
これが、信用にレバレッジをかけて、やりたいことをやる例。
借信とレバレッジ
先ほどのような例に習ってみんなクラウドファンディングを頑張ればいいじゃないかとも思えますよね。
ただ、この場合お金を集めて終わりになってしまうと、すごくマイナスになるので、気をつける必要があります。
信用に対する交換と売買に対する交換は全然違っています。
売買における等価交換というのは基本的にはお金をいただいて、物や体験を返せば満足していただき、期待通りのものはいただいたのでOKです、となる。
しかし信頼を前借りして何かいただいた場合は、前者に加え期待というものが乗っています。
ただ単にお金や協力に対して「ちゃんとやったよ」「返すよ」というものだけだとすると、期待分届いていないことになるんです。
つまり、借金ならぬ借信をしてしまうことになります。
なのでちゃんと結果だけでなく、誠実さや真摯さというのをすごく付け加えて返さないと対等になりません。
先ほど借信と言いましたが、これを持ってると周りにすぐ広まってしまうので、そういう人は社会的な信用がどんどんなくなってしまうんですね。
一方で、借りたものに対して返しすぎるということはできます。
真摯さを丁寧に丁寧に、向こうの期待以上にやってあげることによって、実はお金を出した側は「そんなにやってもらえるとは思ってなかった」と思うものです。
むしろここまでやってもらってなんか嬉しいわ、みたいな。
またなんかあったら言ってね。という関係にすることもできます。
なので借信どころか、信用を貸すことができる。
そういうところまでやっておくと、次何かやるときに、あの人だったら信用できるからもっと応援してあげようと思うものです。
加えて、周りの人に声をかけてくれたりもする。
ということで信用というのは着実に積み上げることもできるが、敢えてレバレッジをかけて先にもらったりとか、もらったときちゃんと返しすぎるくらい返すことによって、さらに次の信用を引っ張ってくることもできるようになるんです。
一歩踏み出す勇気を持つためには?
死なないファースペンギンになること。
ファーストペンギンになって死なないためには、2人目が飛び込んでくれること。
そして2人目が飛び込む前に、「お前らも来いよ!」って言ってくれること。
後に続いてくれる人がいない段階で飛び込んでしまう人は結果的に、何も大陸を見つけられず、魚も見つけられずに死んでしまうことがあります。
だけどそこで後ろに続いてくれている人がいれば、そこ経由で物が来たり戻っていくことができるんです。
フォロワーの中でもリーダーとなるような人、自分が行き過ぎてしまったときに止めてくれる人、周りに説明してくれる人を作るということが、すごく成功の確率をあげるんじゃないかなぁと思ってます。
だから何かやるときには、信頼できる人に相談すると良いです。
Readyforも、そういう場所になることを目指しています。
樋浦直樹さん、ありがとうございました!
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文章:仲本晟真